高分子化学の院試の勉強法は、情報が少ないです。
私も院試のときに、情報が少なくて困っていて、工夫して勉強していました。
本稿では、高分子化学の問題集や教科書を例にとっておすすめの勉強法を紹介します。
有機化学の本は以下の記事を参考にしてみてください。
院試の勉強法については「院試勉強法バイブル」を読むことを絶対におすすめ致します。貴重な院試勉強の情報が載っているので非常に参考になると思います。
ちなみに、kindle unlimited(1ヶ月無料)利用すれば、無料で読むことができます。1ヶ月間だけ利用して解約するのもありなので、金欠な学生にはありがたいです。
【1-1】参考書 初学者or読み物
この【1-1】で紹介する参考書は初学者または息抜きとしての読み物です。院試向け参考書は下の方の【1-2】で紹介しています。
ここで紹介する本は、院試向けではないものの、図解で説明してくれるので、勉強でわからないところがわかったり、知識の幅が広がったり多くのメリットがあると思います。
理由は、高分子の本自体が難しい上に、やさしく書かれた本が、あまりないからです。図とイラストで説明してくれる本は、初学者には理解しやすいと思います。
「トコトンやさしい高分子の本」は図解で高分子をわかりやすく説明した本です。このとことんわかるシリーズは、入門者にも最適です。
著者は東工大で高分子に関わる教授陣で書かれた本なので、院試で東工大受験を考えている人は読んでみるといいと思います。
内容は、高分子の物性や、重合方法、機能性や応用編としてどんなところにつかわれているかが書かれています。
特に、応用編で書かれていることは、教科書の内容からステップアップして、世の中で使われることと結びつくため面白いです。
例えば、以下の内容が書かれています。
- 紫外光に化学反応する感光性高分子 「UV効果塗料、フォトレジスト」
- 高分子の表面特性 「フッ素樹脂になぜ食材がこびりつきにくいのか」
- 光と酸素で高分子は劣化する 「電子部品や自動車部品は劣化しにくい高分子が使われる」
- 合成繊維の作り方 「溶融紡糸法、溶液紡糸法」
- 3次元データを基に樹脂を3次元造形 「3Dプリンター」
- 強くて軽い高分子系複合材料 「航空機やスポーツ用品にCFRPの用途が拡大」
- エネルギー分野への応用 「軽量化・風力発電・燃料電池・浸透圧発電」
合成繊維の作り方 「溶融紡糸法、溶液紡糸法」は、繊維系の会社ならどこでもやっている技術です。旭化成、東レ、東洋紡などの主要繊維メーカーはどこももやっている(あるいはやっていた)と思います。
CFRPなんかは東レが有名で、実際に飛行機や釣り竿にも採用されています。CFRPは東レが芽が出るまで研究開発を諦めなくて、大成功した代表作品です。
フッ素樹脂に関しても、エアコンで有名なダイキンや、クレラップのクレハが有名だったりして、知っておくと就職活動の時のネタにもなるかもしれません。
「高分子材料が一番わかる」は、読み物として面白い本です。著者は京都大学、化研所属の名誉教授です。
こちらは、どちらかというと、「高分子材料が世の中でどのように使われるいるのか」ということろに特化している本です。
なので、物性や合成などについてはほぼ書かれていませんが、内容が面白いです。
例えば、液晶ディスプレイなども、液晶高分子しからできていることをご存知でしょうか?その液晶ポリマーについての内容も書かれています。
他にも、エンジニアリングプラスチックや、デンドリマーなどの機能性高分子、ベール賞を取った導電性高分子、ライフサイエンス、環境系としてキャパシタの内容など書かれています。
高分子が世の中でどのように使われているには良い一冊です。
ちなみに対象者は、以下のとおです。
- 化学系学生、化学系技術者
- 高分子材料に関わっている技術者
- プラスチックついて勉強し知識を深めたいと志す学生・技術者
Amazonで試し読みできます。
「図解入門 よくわかる 最新 高分子化学の基本と仕組み」は2021年にでた書籍で、比較的新しいです。著者は化学大学生向けの参考書をよく書いている齋藤勝裕さんです。
高分子化学の基礎の基礎を、やさしく、わかりやすく、ていねいに解説しています。
高分子の合成方法も、しっかり記載されております。例えば、リビング重合反応や、共重合、逐次重合などなど。
天然高分子と合成高分子の種類・性質・違い、高分子が抱える環境問題の解決策、さらにSDGs関連の話題などについても解説します。
もくじ
- 序章 高分子とは?
- 第1章 活躍する高分子
- 第2章 低分子と高分子
- 第3章 高分子の分子構造
- 第4章 高分子の作り方
- 第5章 高分子の物理的性質
- 第6章 高分子の化学的性質
- 第7章 高分子材料の種類と性質
- 第8章 機能性高分子の種類と性質
- 第9章 天然高分子の種類と性質
- 第10章 高分子と環境問題
「数学フリーの「高分子化学」」も上記の本とほぼ同様の内容です。
【1-2】参考書 院試向け
高分子化学は教科書自体がわかりにくく、内容自体もわかりにくいので、参考書が威力を発揮します。
高分子化学がわかりにくくて、理解できないという人は、参考書を手元に置いて勉強した方が圧倒的に勉強効率が上がります。
「絶対わかる高分子化学」は、高校生でもわかるくらい簡単に書いてくれているので非常におすすめできます。
「マンガ+要点整理+演習問題でわかる 高分子化学」は、演習を通して学んで行けるので、よりおすすめします。重合についてもわかりやすく書いてくれています。
1~2習慣でざっと読んで頭に叩き込んでください。
どちらの本もAmazonで中身を試し読みできます。
「ここだけは押さえておきたい高分子の基礎知識」は、東京工業大学の高分子化学の教授陣が、わかりやすく書いてくれた本です。東工大の大学院受験生にもおすすできます。
教科書わかりにくい部分のイメージができるようになります。
なぜ自分の院試のときにこんな本がなかったのか、非常に悔やまれます。
物性と構造のつまずきやすいポイントをわかりやすく解説。重合については書かれていません。
Amazonで中身をチラ見できます。
「分子から材料まで どんどんつながる高分子 断片的な知識を整理する」は、上記の本よりもう一歩踏み込んだ本です。
高分子の物性、熱力学、レオロジー、重合(ラジカル重合、リビング重合、アニオン重合、カチオン重合)なども書かれています。
東京工業大学の高分子化学の教授陣が書いており、東工大の大学院受験生にもおすすできます。
Amazonで中身を立ち読みできます。
【2-1】教科書 日東駒専・産近甲龍~MARCH・地方国立
下記の3冊いずれかと、上記の参考書を持って勉強することをおすすめいたします。
「高分子化学入門~高分子の面白さはどこからくるか~」は高分子化学の入門書です。改訂されて出版も新し目です。
これから高分子を学ぼうとする人の入門書として書かれています。
また、コンセプトが「高分子が難してくわからない!」という人のために書かれているので、他の本で挫折した人向けにもいいかなと思います。
豊富な図表とイラスト、最先端のトピックス、コラムがあるので面白いです。
演習問題もついています。
⇓は前版
「ベーシックマスター 高分子化学」は高分子化学の入門書で初学者に最適です。この「ベーシックマスター」シリーズは評判が良いです。
工学部および理学部の化学系学部の大学生1~3年生が対象です。
複雑な反応が多く、難しくなりがちな高分子化学をわかりやすく理解できるように、説明してくれています。
前半は、高分子化学基礎の物性と反応を説明しています。後半はややレベルがあがり、応用的な内容です。
各章末の演習問題があるので、知識の確認ができます。
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「エッセンシャル高分子科学」は薄くてわかりやすい本です。東工大の先生や、名古屋大学の先生が関わって作っています。ちょっと古いですね。
大学学部、大学院の学生および企業で高分子材料の研究、技術開発に携わる人が対象になっています。
コンパクトな本ですが、かなり網羅性が高いと思います。
図書館であればぜひ手にとって読んでみてください。私は院試の時に購入しました。
【2-2】教科書 旧帝国大学・東工大~東大・京大
このレベルを最初から勉強しようとすると、挫折する可能性があります。
上記の入門者向け教科書と参考書を一冊持っていると、わからないことも、違う視点からも内容を理解できると思います。
高分子化学の教科書と言えば、高分子学会の「基礎高分子科学」で間違いないです。2020年に第2版が出版されました。私も院試で使用しました。
高分子物性、高分子合成、演習まで幅広くカバーしており、教科書及び辞書的な物として手元に置いておくべき本です。
しかし、若干わかりにくい部分もあり、別の教科書や上記で紹介している参考書と併用するのがベストです。
特に溶液論やレオロジーや物性は分かりにくい分野でもあるので他の本との併用をおすすめします。
私はこの本に書いてある重合と合成の反応式をノートに書いて、何度も見直して暗記しました。
ラジカル反応、リビングラジカル、アニオン重合などなど場合分けして覚えました。反応のところは出やすい上に1番わかりやすいのです点取り問題です。
物性のところは、ガラス転移点やミクロブラウン運動のところは分かりやすいで点取りです。院試のときは上記と同様にノートに書いて覚えました。
金欠の方や品切れの場合、第1版を購入可能です。2006年出版で、10年以上前の本になりますが、私は当時こちらで勉強しました。
いろいろアップデートもあるのと思うので、可能であれば第2版をおすすめいたします。
「新高分子化学序論」は京大の研究室の本棚に置いてあり、よく読んでいたんですが、コンパクトでありながらわかりやすいです。「高分子科学」よりもわかりやすい部分もあり、こちらも手元にあるといいです。
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「高分子の構造と物性」は高分子の構造と物性に特化した本です。
東大、京大、阪大、名大の高分子化学に関わる有名な先生たちが書いています。
高分子化学に関わるすべての学生・研究者が対象者です。
構造や物性に関しては、高分子学会の「基礎高分子科学」よりも、詳細に書かれているので、もっと詳しく勉強したい人におすすめです。
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【3】問題集・演習書
「基礎高分子化学演習」と「マンガ+要点整理+演習問題でわかる 高分子化学」は、斎藤さんの本で、どれもわかりやすいのでおすすめです。
「基礎高分子化学演習」は、Amazonで購入できない状態ですが、楽天やYahooで手に入れることができます。⇒絶版になり現在、販売していない状態です。Amazonで中古で販売されているときもあるので、購入しておきたいです。
「基礎高分子科学演習編」は高分子学会の演習書です。2011年なので自分が院試を終わった後にでました。非常に悔しいです。当時あれば。。。
院試ではこの演習書をやっておけば間違いないです。演習書自体少ないので重宝するはずです。
当時、私はこちらの「高分子科学演習」で勉強していました。
かなり古い本で、説明もわかりにくく最悪でした。
高分子学会から、現代版の問題集(基礎高分子科学演習編)にアップデートされているので、そちらをやりましょう(上記参照)。
【4】勉強法
自分の大学のテスト問題を復習
学部で高分子科学の単位を取っているならば、その過去問から勉強するのがおすすめです。当時覚えていた内容なので、思い出すのも早いと思います。
教科書・問題集で勉強
【1】で上げた参考書を使い勉強するのがいいと思います。まず、1~2週間ほどでざっくり全体像を掴むことが大切です。
さらに、詳しいことが知りたければ、「基礎高分子科学」で調査するスタイルで大丈夫です。
高分子科学の問題集や演習書は基本的に少ないです。「マンガ+要点整理+演習問題でわかる 高分子化学」と「基礎高分子科学演習編」を徹底的にやり込めば大丈夫かと思います。
私の場合、主要な重合反応は、教科書に載っている反応をノートに写し、自分で問題を作って、暗記していました。
例えば、「チーグラー・ナッタ触媒を用いたポリエチレンの重合反応を示せ」などです。
院試過去問題を検索
高分子科学の問題は少ないので、貴重な問題でもあります。
そのため、自分の大学の過去問だけではなく、インターネットで検索して、他大学ではどんな問題が出題されているのか参考にして勉強していました。
解答は基本的に無いので自分で調べて、自分で作くる形になります。それが力になります。
院試の問題も参考になります。京都大学、大阪大学、東京工業大学では、高分子化学専攻があり過去問を無料公開しているので、参考にしてみても良いでしょう。有機化学の分野の中に含まれる場合もあります。
京都大学
大学院入試詳細 – 京都大学大学院工学研究科 高分子化学専攻
大阪大学
東京工業大学
全体的な院試の勉強法
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